U23男子日本代表はビジネスクラスで悠々とフランスへ。一方、なでしこジャパンは、他の多くのアスリートたちと一緒に、エコノミークラスでの窮屈移動。
英国の新聞やウェブサイトは、沢穂希選手が語ったとされる以下の無実なコメントに乗じて、なでしこ達の「憤り」をこぞって掲載している。
「あべこべになるはずじゃないんですか。年齢からいったって、私たちがシニアなんだし」、女子ワールドカップのヒロイン沢穂希(33才)は、月曜日、パリに到着した後で日本のマスコミに、微笑みながら、こう語った。
こんなコメントを記事にしたいマスコミに対し、沢選手は、確かに微笑みを浮かべてそう語ったのだが、続けて放ったこの発言には彼女の気持ちがこもっていた(勝利すればボーナスの対象となり、帰途の旅は確かにアップグレードになる)、
「ワールドカップでは、行きはエコノミーでしたが、優勝したことでビジネスクラスにグレードアップしました。今回も結果を出して、同じような待遇を受けたいですね。」
事実 — エコノミークラスで移動したのはなでしこ女子だけではなく、ファーストクラスの優待を受けたのもU23男子サッカー代表だけではなかった。
事実 — チャーター機ではなかったため、アスリートたちは機内のあちこちにいた。ビジネスクラスやファーストクラスは当然座席数に限りがあるし、別の便を利用しない限り、全員に快適な席が行き渡ることなどあり得ない。確かに頭の痛い話ではある。
公式に苦情が申し立てられたとか、誰かが「憤って」いたのが実際に確認された上での報道ではない。
また、サッカーだけを取り上げるべきではない。さもないと、英国記者たちに迎合してしまう。U23の男子アスリートたちがより金を稼ぎ出している事実をはじめ、中にはプロもおり、身体の大きさの違いもあり、はるかにフィジカルなゲームを強いられることなど、様々な側面が考慮されているのだ。
仮に、性差別とか、二流市民として冷遇されていた日本の女性史が取り上げられるなら、この記事の滑稽なまでの絶望的要素が浮き彫りにされるわけで、そうなれば、この「憤り」の記事には事実などいくばくもないことが周知のこととなる。どのアスリートがエコノミー席で、誰がビジネスクラスやファーストクラスだったかが記載されたリストを入手できるなら、「機内前部」に女性たちは何人もいただろうし、「後部」にいた男性も少なからずいたはずだ。だが、そんなことをしたら記事が面白くなくなってしまう。
この持論を裏付けるため、私は、英国のプレス向けサイトを検索し、幾つものヒットを得た後で、ある日本人の友人に頼んで日本語でこの記事を検索してもらった。すると、たった一つだけ、報知新聞がヒットしたそうだ。「デマ新聞」として愛読者の多い新聞である!ここでペンを休めてもいいだろうか。
あなたはどう思うだろうか?
アラン・ギブソン
JSoccer マガジン編集者